PROJECT STORY

歯科医院の事業承継問題をクリアせよ!
「D-Transit」が歯科業界に新たな文化をもたらす

歯科医院の
事業承継問題をクリアせよ!
「D-Transit」が
歯科業界に新たな文化をもたらす

黒田 裕史黒田 裕史

黒田 裕史
医療事業部門医療機器事業室
2014年入社
関西大学 外国語学部  外国学科卒

入社後は四輪事業本部でオークション業務、営業担当を経て2017年に新規事業統括部門医療機器事業室(現在の医療事業部門医療機器事業室)に異動。医療機器のオークション運営や新規・既存会員への営業、営業数字管理などに携わる一方で、2019年に新規事業(D-Transit)のプロジェクトに参画。営業として提携企業への協業やサービス内容の提案、スケジュール調整、打ち合わせの設定、サービス内容の改善などに携わった。現在はプロジェクトで得た経験を活かし、営業活動全般を担当。

石川 隼見石川 隼見

石川 隼見
医療事業部門医療機器事業室
2014年入社
中央大学 法学部 法律学科卒

コーポレート部門で約5年、人事総務部、経営管理部などに在籍し、自社の上場準備などにも関わったのち、医療事業部門医療機器事業室に異動。管理業務に携わりながら新規事業(D-Transit)の立ち上げプロジェクトに参画。管理業務の経験を活かし、事業計画の策定やKPIの設定等、主に数値面の管理を担当した。同時に関連会社メネルジア(同じく新規事業)に出向兼務のかたちで同社の管理業務全般も担当しながら現在に至る。

※所属部署はインタビュー取材当時のものになります。

01 Outline

オークネットの医療事業が
目指すもの
今、医療業界を取り巻く環境は厳しい。医師や医療従事者の方々が患者さんを救いたいと強く願う一方、さまざまな要因により赤字経営を余儀なくされている医療機関も多いという。
2011年に発足したオークネットの医療事業は、需要の高い中古医療機器を適正に流通させることによって医療機関をサポートするため、設備投資の負担軽減に寄与することを目的にスタートしたサービスだ。社内では比較的新しい部署であると同時に、常に新規事業を模索しているチャレンジングな部署でもある。
2019年、事業室内で新規事業を検討していた際、20〜30の提案の中から「歯科業界の事業承継」という下記に紹介する課題にフォーカスしたのが2020年8月にリリースした「D-Transit」の事業化のきっかけだ。プロジェクトメンバーとして参画した石川、黒田は同期入社。しかし二人は全く異なるキャリアパスを歩んできており、今回のプロジェクトでは互いを補完し合う絶妙なコンビネーションで関わったという。その二人の声をご紹介する。
「D-Transit」が解決する
歯科承継問題とは?
歯科医師の年間新規開業数は2002年をピークに減少傾向にあり、2018年には初めて廃業が開業を上回る結果になっている。背景にあるのは歯科医師の高齢化だ。2022年には歯科医師の約40%が60歳以上になるという。そうした歯科医院の事業承継は以前より業界の課題であったが、他の医療分野に比べて小規模な経営が多いことから譲渡価格のスタンダードが存在せず、M&A業界も積極的に取り組んでいないのが実情だ。オークネットはそのニーズに焦点を当て、2020年8月、歯科医院向けの新サービスとして、歯科医院の譲渡希望者と開業希望者を繋ぎ、事業を承継させるスキームを開発。WEBで手軽にアクセス・検索ができる「D-Transit」をリリースした。サービスを利用することで、譲渡希望者は売却利益を得て、開業希望者は設立コストを必要最小限に抑えながら、安心して事業承継を進められるメリットがある。業界でも大きくニュースで取り上げられた、今注目のサービスだ。

02 Episode

石川エピソード
「歯科医院に特化した事業承継」の分野で、
業界の主導権を握りたい。
「歯科医院に
特化した事業承継」の分野で、
業界の主導権を握りたい。

「歯科医院の事業承継がなかなか進まない。その業界の課題に切り込む」。私がこのプロジェクトメンバーに選ばれた時、これはまさに新規事業で「0から1を創り出すチャレンジ」だと思うと心が高鳴りました。業界にはまだない非常に確度の高い、ニーズのあるサービスだと確信できたからです。
事業開始の意思決定は2019年の年末。UI/UXの設計やシステム開発の都合上、スケジュールが非常にタイトとなったため、結果的にはリリース時期を遅らせることになりました。スピードも大切ですが、せっかく良いサービスだから、「中途半端な状態ではなく、納得できる形でリリースさせよう」というチームの想いが強かったのです。
プロジェクトチームはリーダーの担当役員のほか、歯科業界の知見者、システムの精通者、そして営業の黒田と管理の私で、5人それぞれが異なる得意分野を持ったメンバーで編成されました。私は管理部門や管理業務の経験を活かし、全員が互いに不足する面を補完し合い、ワンチームとして力を発揮できたと思います。そして、「D-Transit」のシステムの仕様などの中身、プロモーションなどの検討・実施についてはチームメンバー全員と、社内のIT部門や外部のパートナー企業など、皆で連携しながら進めていきました。
特に印象的だったのは、顧客(=歯科医師)の声を反映させる難しさです。当社には情報を流通させて仲介するノウハウがあるものの、歯科業界の現場については全くの無知でした。そのため、歯科医療機器を扱うメーカーや医療コンサルタントなど外部のパートナー企業からもたらされる歯科医師の意見・要望等は貴重でしたし、さらにそれをサービスに落とし込むのは非常に難しかったですね。

例えば、システムの仕様を検討していくと、「こうした方が管理しやすいから」とどうしても運営者目線で考えてしまいがちです。リリース前にテストユーザーの歯科医師の先生に協力していただいたのですが、“現場の声” は非常にシビア。「使いづらい」「わかりづらい」とのご指摘も多く、私自身が改めて「顧客目線」を学び、その重要性を再認識する場面が何度もありました。
また、歯科医師の方々の多くは地域に根差した経営をしておられ、事業承継の際には「医院だけでなく、患者さんまで引き継ぎ、継続してもらえる方に譲りたい」と考えていらっしゃいました。そういう“終い方”にも真摯に責任感を持って向き合っている、その想いまで汲めるような仕組みを考え、サービスで貢献していきたいと強く思いました。
プロジェクトはまだまだ完遂したとは言えませんが、2020年8月に無事リリースされ、ひとまず、「0から1を創り出す仕事を自分たちの力で実現させたい」という思いはカタチにできました。サービスが落ち着いた時点でチームは解散しましたが、1から5へ、10へと成長させていくのはまだまだこれからです。
プロジェクトが進行していく過程は日々「ワクワク」と「ドキドキ」を繰り返しながら、1歩ずつ進んでいく、そして時には後退してしまう、あの感覚が忘れられません。自分たちで四苦八苦しながら作り上げたサービスを実現できたことは間違いなく自分の成長に繋がっています。今後は、また新たなサービスに注力していきますが、これまでの経験を活かし、新しい知識を吸収し続けながら、刺激的な毎日を過ごしていきたいと思います。

黒田エピソード
売り手側の想いに寄り添うサービス構築を。
“現場の声”に気づき大事にするのが営業。
売り手側の想いに
寄り添うサービス構築を。
“現場の声”に気づき
大事にするのが営業。

「パソコン上でこの医院の売買を成立させちゃうって言うの? ダメダメ、そんなの」。
今思えば、歯科医師の先生がそうおっしゃったのは当たり前の反応だったのかなと思います。私は営業担当ですので、社内ではお客様に一番近い存在です。ただ、新規プロジェクトに関しては当初歯科業界や事業承継などの知識は皆無。協業する歯科業界のプロに協力いただきながらも、歯科業界に合うサービスの構築はなかなかの難題でした。
「D-Transit」は事業承継というサービスの特性上、買い手となるのが若い医師、売り手が高齢の医師という構図になります。ITに慣れている若い医師はともかく、高齢の医師に向けてはシンプルなUI/UXなどわかりやすく使いやすいサイト作りが必須でした。しかし、実際の現場の声を聞くと、問題は単にそういうところではないことがわかってきました。
事業承継とは、自身の事業を畳み、譲り渡すことです。何十年も歯科医院を続けてこられた先生にとって人生における大変重大なご決断です。そのため、PCで簡単に完結できる手軽さの方が、逆に共感を得られにくかったのです。
私は一番現場の声や気持ちに気づくことができる立場だと思っていました。しかし、今回のプロジェクトに携わったことで、お客様が抱える課題に気づき、想像し、新たな発想で解決方法を考える大切さなど、新しいスキルを学ぶことになりました。社内の机上で話して作ったサービス像のままでは、現場に即したサービスにはなり得ないことも思い知らされましたね。

サイトをオープンするにしても、まずは買い手を集める前に売り手を募り、サービス内容を充実させなければなりません。「D-Transit」はネットで完結できるのが特徴ですが、あえてアドバイザーによるサポートや書面に印鑑という取引を対面で対応できるようにしながら、いかに“売り手側の先生に安心して使っていただけるか”を考え、満足度の高いサービス構築に力を注ぎました。
また、医院の立地や不動産条件の価格だけでなく歯科特有の設備や特徴など、医院の“内側の価値”が見える情報を網羅し、売り手の想いが伝わることも意識しました。歯科医師のテストユーザー様にもご協力をいただき、作っては変更することを繰り返しながら、リリースの前日ギリギリまでサービス内容やサイトの構成などを調整していましたね。
ようやく業界ニーズに沿ったサービスをリリースできた時はほっとすると同時に、最初に予定していたものより良いサービス内容で完成したことに、なんとも言えない嬉しさが込み上げてきました。そしてリリース後は、「これは歯科医院にぴったりのサービスだね」「これだけしっかり事業承継できるサービスは他にないよ」と業界からも同業他社からも高い評価をいただき、自信を持てました。
社外・社内の方々と一つのサービスを作り上げるために打ち合わせを重ね、サイトやサービス内容を改修し、スケジュール通りにプロジェクトを動かすことで既存の仕事とは違った調整力を養うことができ、また、さまざまな考え方や知識に触れて自身の思考の幅も広がったように感じます。
一人では到底成し得ることができないプロジェクトを、関わる全員が自分の強み・アイデアを出しつつ一つの目標に向かって進み、リリースに至ったことは1メンバーとして誇らしく、自分の自信にもつながりました。このプロジェクトで学んだように、今後も従来の思考方法にとらわれることなく、新たな価値・サービスを自分から創造することを心がけ日々の業務に取り組みたいと思います。

03 Epilogue

「サービスリリースはゴールではなくスタートなので、
今後の事業拡大に向けても最善を尽くしていきたい」と語る二人。
「管理部門で培った繋がりをもとに石川が社内調整を
一手に引き受け、私は営業として存分に動くことができました。
同期と言っても全く立っている土俵が違うとライバルではなく、
本当に良い仲間。
しかも同期という強い絆で結ばれた
最高のコンビですね」(黒田)と終始笑顔で楽しそうだ。
リリース当初、業界紙をはじめ
多くのメディアでも取り上げられた「D-Transit」。
現在、パートナー企業もプレスリリースの発信や
営業活動などを積極的に展開しており、
歯科医師会などからも、業界の課題を解決する
取り組みとして評価されており、
「D-Transit」の利用者数も増え続けているという。
高齢になって後継者不足で悩んでいる
歯科医師の事業承継問題は全国にあるが、
「D-Transit」を利用すれば全国どこにいてもマッチングが可能だ。
本来なら全く接点のない歯科医師同士が
事業承継のパートナーになり得る可能性が十分にある。
現場の歯科医師からの評判を耳にしたり、
問い合わせ対応を受けたりするたび、
「自分たちのD-Transitが歯科業界に少しでも貢献できたことが
実感できて嬉しい」(石川)と話すように、
歯科医師業界に新たな文化をもたらしたオークネット。
全国の評判の良い歯科医院が廃業となることなく、
うまく事業承継され地域に愛され続けることを願いたい。

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